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には小さなミイラが抱かれている。

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には小さなミイラが抱かれている。

には小さなミイラが抱かれている。

 

「おサエはんッ!おサエ……

 

 松原は大きな身体を震わせ、サエの身体を抱き締めた。

 

「何でや、何でこんなことになったんや……!」

 

 その声に反抗したのか、https://cutismedi.com.hk/expert/13/%E9%81%A9%E7%94%A8%E9%83%A8%E4%BD%8D%E5%8F%8A%E5%8A%91%E9%87%8F ぴくりと目蓋が動く。それを見た松原はサエ、と名をもう一度呼んだ。

 

「ちゅ、うじ……はん。なん、で……

 

「何ではこっちの台詞や!これはなんなんや……

 

 暖かみを失いつつある頬に手を当てる。まだ生きていることを確かめるように、何度も頭や顔を撫でた。

 

……もう、生きたかて、意味……あらへんのや……。ミチも、おらん。忠司はん、も……おらん」

 

 

 その弱々しい声に、松原は顔を歪める。大粒の雫がサエの頬に落ちた。

 

「すまんかった、すまん、来れへんかって、すまへんだ……ッ。」

 

「ええの。もう、ええの……。ああ、おすなぁ……。ミチが……泣い、とる。行かんと……

 

 喋る度にの太い血管からはどくどくと血が溢れる。気管も損傷しているのだろう、ひゅ、ひゅと空気の漏れる音が聞こえた。

 

「アカン!行ったらアカン!ワシと生きてくれ、頼む!ワシは、おサエはんに惚れとるんや。何もかも捨ててもええ、何でもしたる。誰も知らんとこでで暮らそうや、せやから……

 

 

 サエは震える細い手を重そうに持ち上げると、松原の頬に触れる。驚くほどに冷たいそれに松原は自分の手を重ねた。

 

「嬉し……。うちも、忠司はん……お慕い、しとりました……。さみし、な……ァ」

 

 

 そこで言葉は途切れる。糸が切れた操り人形のように力が抜け、だらんと手が頬から離れた。サエは幸せそうに僅かな笑みを浮かべている。「───!」

 

 言葉にならぬ程の悲痛な声が部屋に響いた。抱き上げた身体からは温もりが失われていく。死臭と血の臭いにつられたが近くを飛んでいた。

 

 

 顔を上げると、その近くには血に濡れた包丁が落ちている。松原はそれに手を伸ばし、拾い上げた。どのような思いで自害を図ったのかと思うだけで、息が苦しくなる。

 

 その時、背を向けている玄関の方から複数の人の気配を感じた。中の様子を伺うかのように、息を殺している。ザリ、ザリと忍び寄る音が聞こえた。

 

 

……何の、用や」

 

 松原は振り向くことなく、そう語り掛ける。その声には怒りや悲しみ、殺気が含まれていた。腕の中のサエとミチをそっと床に横たえる。

 

「お前こそ何者だ。……この臭い。まさか、そこの女は死んだのか?」

 

 イイ女だったのに、と残念そうな声が外から聞こえた。それを聞いた瞬間、松原の中で何かがぷつんと切れる音がする。

 

 ふらふらと立ち上がる。衣服や手足は自身の腹部からの出血とサエの返り血で凄惨なまでに赤黒く染まり、まるでその出で立ちは鬼のようだった。

 

「アンタら、か。おサエはんに……手ェ出したんは」

 

 一歩、一歩と近付けば目の前にいる浪士は後退る。本能的な恐怖だろう、カチカチと音を鳴らしながらも抜刀しようと、柄に手を掛けた。

 

 それを見た松原はその手に掴みかかる。そして手を捻りあげると、外へ向かって力いっぱい蹴飛ばした。その弾みで腹の傷が開き、焼け付くような痛みが襲う。脂汗が滲みながらも松原は歯を食いしばって耐える。

 

「ええか。この人はなァ、アンタらなんぞが触ってええ人やあらへんのや……

 

 

 浪士が落とした刀を片手にゆらり、と外へ出た。すると、そこには三名ほど仲間と思わしき浪士がいる。

 松原の気迫に押されたが、手負いであることを察すると抜刀した。

 

 

「ほお、新撰組組長に喧嘩売るんか。大した、覚悟やな、ッ」

 

 ぽたりぽたりと滴り落ちた血と汗が地面に波紋を残していく。野次馬が少しずつ集まり出した。

 

 

 松原に蹴り飛ばされた浪士がそっと小路から逃げていく。それを追い掛ける程の体力はもはや残されていなかった。

 腹に巻かれた晒しの一部を切り取ると刀と自分の右手とを、左手と歯を使って縛る。

 

 そして深呼吸をすると刀を構えた。それを見た浪士が松原に斬りかかっていく──

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